仕事や日々の生活に欠かせないパソコンやスマホ。ガジェットはどれだけデザインが良くても、中身の性能が相対的に下がっていくので、ずっと使うことは難しい。
一方、筆記用具も仕事に欠かせないが、機能が古くなって使えなくなることがない。自分と相性の良い筆記用具を見つければ、ずっと使えるのが魅力だ。
「相棒」となる筆記用具を探して、学生の頃から少し高めのボールペンや万年筆を買ってきた。私がたどり着いたイチオシのメーカーは、ドイツのLAMYだ。LAMYのボールペンと万年筆もいろいろと買ったが、私が日々愛用している、原点にして頂点のLAMY 2000を紹介したい。
機能的なデザインに徹底的にこだわるブランド
LAMYはドイツの筆記具メーカーで、機能的なデザインという芯を持ちつつ、外部のデザイナーやデザイン会社とじっくりと商品を開発するのが特徴だ。新製品が続々出てくるというよりも、たまに新製品が発表され、長いスパンで同じ製品が販売されている。
LAMY 2000は、今に続くLAMYの哲学を決定づけたLAMYの原点と言える製品だ。英語版のLAMYウェブサイトより、LAMY 2000の開発を紹介しよう。
LAMY 2000の歴史
1960年代初め頃、LAMYのマーケティング・マネジャーであったマンフレッド・ラミーは、LAMYのブランドポジションを確立するための、長期的な戦略を模索していた。バウハウスを愛するラミーは、BRAUNなど、当時画期的な工業デザインを展開していたブランドの製品を研究していた。
1963年、ラミーと、BRAUNでデザイナーとして働いていたゲルト・A・ミュラーと運命的な出会いを果たす。すぐに2人は、「バウハウスの伝統に基づいた万年筆をデザインする」という共同プロジェクトを立ち上げた。ミュラーは、バウハウスの「Form follows function ― 形態は機能に従う」の考え方に厳密に従い、ミニマルなデザインのLAMY 2000を考案した。LAMY 2000は、LAMYで初めて外部のデザイナーと共同で開発された製品であった。
ミュラーのデザインモデルは、最終的な製品の形とほとんど似たものであったが、ミュラーは技術的に実現可能かどうかをあまり検討していなかった。そこで、LAMYのデザインエンジニアはミュラーとミーティングを重ね、デザインを現実的なものに仕上げていった。
素材については、2人はBRAUNのシェーバーにインスピレーションを受け、当時としては新しい素材であるマクロロン(ポリカーボネート)と、ステンレススチールを組み合わせることとした。加工の難しい2つの素材のつなぎ目を見えないようにしつつも、マットな仕上げを実現するために、LAMYは新しい加工手法を開発した。
こうしてLAMY 2000は、1966年に発売された。LAMY 2000は、当時流行っていたクラシックで伝統的なデザインのペンから脱却するという狼煙となり、その後のLAMYのブランドやデザインを方向づけた。Functional Design ― 機能的なデザインは、LAMYのデザイン原理となった。外部のデザイナーやデザイン会社との共同プロジェクトは、デザイナーの個性が光りつつも、LAMYらしさが感じられる製品を生み出し続けている。
LAMY 2000 万年筆
まずはLAMY 2000の万年筆。万年筆は、LAMY 2000以外にも、LAMY dialog 3、国産のものや「クラシックで伝統的なデザイン」のものも持っているが、LAMY 2000が一番気に入っている。
唯一無二の、最高にかっこいいデザインであることに加えて、
- キャップを付けてもバランスが崩れない
- 20グラムの軽さ
- ニブが24金で、書き心地が滑らか
と、実用面でも欠点がない。
LAMYの万年筆はdialog 3のように金属がメインに使われ、重いものが多い(dialog 3は47グラムもある)。LAMY 2000は樹脂がメインなので、書いているときに重くて疲れるということがない。
私は小さい字を書きがちなので、ニブはEFを選んだ。
LAMY 2000で最初に開発された製品であり、すべての筆記用具で一番好きなものを選ぶのであれば、私はこれを選ぶ。と思いつつも、今は万年筆であるゆえに使っていない。キャップ式なので開け閉めに両手を使う必要があることや、キャップを開けたままにしておくとペン先が乾いてしまうことから、気楽にフットワーク軽く使うということがやりづらい。このため、インクを抜いてきれいに洗って、保管している。
LAMY 2000 4色ボールペン
私がLAMY 2000 4色ボールペンを使う一番の理由
LAMY 2000 4色ボールペンは、伝説とも言えるLAMY 2000 万年筆の遺伝子を受け継ぐ、実用的な芸術品である。
革新的なデザインのLAMY 2000と仕事をする。私が仕事で使う筆記用具はこれだけだ。それによって自分も人とは違った仕事ができるかは別だが、これまでとは全く異なったデザインとして生み出され、半世紀以上の時代を超えて愛され続けているLAMY 2000を手にすると、自分もいい仕事ができるという勇気をもらえる。これが私がLAMY 2000 4色ボールペンを使う一番の理由だ。
LAMY 2000 4色ボールペンの細部
4色の軸が入っているとは思えないスリムさ。私は太い軸は好きではないので、単色ボールペンと変わらない太さが気に入っている。
色の切り替えは振り子式で、出したい色のマークを天井方向に向けてノックする。スライドレバー式や回転式よりも珍しい方式だが、シンプルな外観に大きく貢献している。
先端が銀色なのでその部分がステンレスと思われるかもしれないが、磁石で調べたところ、ここは他の部分と同じくマクロロンが使われており、銀色の塗装がされているようだ。このため、先端だけ不自然に重いということがない。
クリップにはステンレスが使われているが、その部分が重く感じることもない。LAMY 2000は全体のバランスが良く考えられている。バランスが悪いと長時間筆記するときに気になるので、重さと同様にバランスも大事なポイントだ。
替芯を入れ替えるためのつなぎ目は、ペンの中ほどにある。製造時に一体となった状態で研磨されているので、見た目も手触りも、つなぎ目がほとんどわからないようになっている。ここもシンプルさにこだわった結果だろう。
クリップ部にLAMYと控えめに刻まれている。メーカー名を主張しすぎないデザインが良い。
4C規格の好きな替芯に交換可能
LAMYは外観のデザインは最高だが、替芯の書きやすさに関しては大したことがない。ここは日本のメーカーの独壇場と言っていいだろう。LAMY 2000 4色ボールペンは4C規格の替芯が使われているので、自分の好きな替芯に交換することができる。いくら外観が良くても、書きづらければ結局使わなくなってしまうが、4C規格を使うことでそのデメリットを無くしている。
私はジェットストリームに惚れ込んでいるので、ジェットストリームの替芯、SXR-200-05の黒、赤、青を入れている。緑はパイロットのBRFS-10Fに変えているが、赤と青以外に色が必要な場面がなく、ほとんど使っていない。マーキングどおりの色にする必要はないので、例えば緑の箇所に予備の黒を挿しておくのもアリだ。
デメリットは有名なこと
LAMY 2000を使っている人は比較的よく見る。これが唯一のデメリットで、人と違うものを使いたい人には向いていないかもしれない。
一緒に使っているMDノート
ノートもいろいろなものを試したが、MDノートに落ち着いた。薄めの方眼で、ページ数が多すぎず、紙質が良く、万年筆のインクが裏写りしたり滲んだりしない。MDノートはシンプルな構造になっているが、裸だと表紙が少し薄いので、別売りの紙のカバーをかけている。
日本のメーカーのノートは基本的に紙質は良いので、罫線や方眼であったり、大きさやページ数、表紙の好みで選ぶのが良さそうだ。
さいごに
不朽の名作を、手頃な値段で買えて、日常で使って刺激をもらえる。そんなデザイン作品は少ないのではないだろうか。